26日政府は広島への原爆投下後の放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた住民84人を被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付すると決めた。これを知って、私は原爆症認定申請照会への回答を何度か書いた患者さんのことを思い出した。この患者さんは被爆者と認定されないことで国は冷たいと嘆き、私が「国の審査基準が厳しいから何回申請されても認定されませんよ」と説明したが、私にもう一度書いて欲しいと何回か書類を持ってきた。私は古い地図を見つけ爆心地から被爆地までの距離を可能な限り遠く見積もって、現状の病気との因果関係を証明した書類を仕上げた。今生きておられたら「黒い雨」を浴びた一人として救済されたかもしれないと思った。またダメだったと、この患者さんは大変悲痛な顔をして、国は冷たいとつぶやきながら、私に茶色い封筒を渡した。封筒の中には「自分は国のために何十年も働いてきたのに被曝者と認めてくれなかった。先生はダメだとわかりながら自分と国と闘ってくれた。本当に感謝しています。」と書かれた便箋が入っていた。それから、この患者さんは急激に認知症が進み、持病の心臓病が原因で亡くなられた。3年前のことである。
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ワクチン職域接種
先週15日から17日までの3日間新型コロナウイルスワクチンの職域接種を行いました。対象者は1,000人。そのうち約1割は外国人就労者で通訳が必要でした。対象企業から10数人の応援をもらって問診、筋肉注射、状態観察の流れは良かったです。シールを貼ったり事務作業がたいへんで、接種終了後の事務作業も煩雑で、事務方に大きな負荷がかかるようです。
1,000人にワクチン接種して、15分の状態観察中に、2人に副反応が起こりました。全身に発疹が出た人とめまいと気分不良を訴える人でした。ふたりとも外国人の若い女性でしたが、30分程度、用意した布団に横になってもらい回復しました。バイタルサインに異常が出なかったので慎重に状態観察を続け、ステロイド注やアドレナリン筋注は実施しませんでした。緊張も原因の一つかもしれないと思いました。
志學館大学講話
今年も志學館大学法学部2年生3年生を対象にした「かごしま学・医療編」を担当し講話をしてきました。90分の講義時間のなかで「コロナ禍で考える鹿児島の医療」というテーマで、コロナ禍での開業医の仕事内容の変化、厚生労働省の施策の変化、COVID-19の基本的な知識、日本や世界の感染状況について考察、新しいmRNAワクチンのことを話しました。今回は学生さんたちが講義進行を協力してくださり、活発な質疑応答が行われました。法学部教授志賀玲子様、キャリアコーディネーター入田直子様にはお世話になりました。お別れ間際に、みんなで笑顔で記念撮影。
明輝会クリニック医師の辞令
7月から坪内博孝先生は副院長に、大沢光毅先生は医長になっていただきました。それぞれの先生たちが明輝会クリニックに来られて2年3か月、1年3か月になります。坪内先生は糖尿病、内分泌の専門として活躍してもらっています。大沢先生は、肝臓、消化器内科を専門に、これまでできなかった内視鏡を使った治療もできるようになりました。二人の先生方の評価を齋藤俊院長からつねづね聞かされていました。齋藤先生こそ院長として素晴らしい仕事ぶりと思っているのですが、この度は坪内先生と大沢先生の辞令交付の様子をユーチューブにアップしてあります。