日別アーカイブ: 2016年6月14日

施設とアルコール

先ほど4年近く在宅医療でみてきた神経難病の患者さんが病棟で息を引き取られた.病棟での臨終であったが,まるで在宅の看取りのようであった.幼いお孫さんが3人.まだ赤ちゃんのお孫さんもいた.ご本人の子の夫婦.高齢者の方々.皆さんに暖かく囲まれての旅立ちで,その最期の死の確認を主治医としてできたことは感激でした.ちょっと目頭が熱くなりました.この患者さんには,数か月前から胃瘻の話をしてきました.今回入院してからは,毎朝病室を訪れ,ときには是非胃瘻を造ってくださいとまで言った.しかし,造らないという意思が強い方だった.ここ一年るいそうが目立ってきた.神経難病の進行のため,嚥下障害が出てきたからだったが,栄養管理ができれば,まだまだ生きることができるはずだった.なぜ拒否するのか.たぶん自分の故郷から遠く離れた土地の老人ホームに住んでいることが生きる希望を失わせていると考えた.だから,主治医として,◯◯に帰ってきたらと提案していたわけですが,ちょうど2週間前に,子供の車に乗せられて久しぶりに故郷に帰り,大好きなビールをうれしそうに飲んだと家族から聞きました.あの世に旅立つ前の逸話のように聞こえますが,私はどうして老人ホームでビールを飲まなかったのだろうと思いました.きっとビールも飲めない環境に居たことも生きがいを失っていた理由かもしれないと思った.当法人の医院以外の,介護施設はアルコール禁止ではありません.人に迷惑をかけないのであれば,アルコールを飲んでもいいのです.実際,介護老人保健施設の廊下にはビールの自動販売機が置いてあります.大好きなアルコールを飲んで,楽しく食事ができて,栄養状態が良ければいいじゃないかというのが私の考えです.さて,この患者さんは誤嚥性肺炎を起こす前に,やっと胃瘻を造ることを承諾してくれたのですが,それから呼吸状態が急速に悪化して鬼籍に入られました.